あか、あお、きいろ。

色とりどりの、鮮やかなキャンディー。
いかにも着色料の固まりといった感じで、体に悪いことは、まず間違いなし。

一つ摘んで、口に運ぶ。

……あめぇ。

色は、ピンク。でもなぜか、味はりんご味。
食べるごとに、俺の身体は毒に蝕まれていくのだろう。

甘い、甘い。優しく首に手を絡ませて締め付けられていく、そんな感触。

(あぁ、早く。)

その毒で息ができない程、俺を満たしてくれればいいのに。


「……よくそんな身体に悪そうなもん、食えるな」

ハワイアンブルーのそれを陽に透かしていると、不意に前方に影が出来た。

「マヨラーのあんたにだけは言われたかねぇや」

この男に身体に良し悪しを言われちゃ、おしまいだ。
フン、うるせぇ、と彼はくわえていた煙草から紫煙を吐き出す。


「どうした、総悟」
「……何がですかい」

ゆらり、と彼の煙草の煙が揺れる。

「近藤さんが、心配か」
「……別に、」


本当は、めちゃくちゃ心配。

新撰組局長。その肩書だけで狙われることは、日常茶飯事だ。
それにあの人はすこぶるお人好しだから、いらぬ問題に巻き込まれることも多々ある。

(……くそ、)
側にいれるなら、この身を盾に守ることも厭わないのに。
今は、ただその無事を願うのみ。

「大丈夫だ、山崎がついてる」

だからこそ心配なんだよ。
そう心の中で返しながら、すべての人事権を掌握する相手を軽く睨み上げる。

(山崎の野郎、帰って来たら覚えてろィ。)

全くの八つ当たりだが、そんなことは関係ない。


「……そういう土方さんは、心配じゃないんですかい」

「俺か?」
相変わらず煙草をふかす彼は、ニヤリと笑う。

「んなもん、心配に決まってる」


(ふん、)
こういう時にいつも感じる、敗北感。
これが年の功とやらから来る余裕なら、自分はこの先一生かけても追いつけない。


……でもね、土方さん。

抱え込んでたガラスの瓶に、そっと力をこめる。
中にはカラフルなビー玉のような、あか、あお、きいろ。

あなたは明日、帰って来る。きっと、溢れんばかりの笑顔と、お土産を抱えて。
そして俺には、"総悟が昔っから大好きな"このガラスの瓶を抱えて。

この場所だけは、あんたにやらねぇよ。

「土方さん」
「あ?」

相手が油断した、その瞬間。

コロン、
色は、ピンク。でもなぜか、味はりんご味。

「な、ななな何」
すんだ、クソガキ。あとの言葉は音にならない。

彼の口には、甘い甘い、毒。
ヘビースモーカーの彼は、きっとその毒々しさに辟易するだろう。

「おすそわけでさぁ」
「は?」

でもね、土方さん。
全部はやんねぇよ。

(あぁ、早く。)

帰って来て下せぇ、近藤さん。

帰って来たら、ぎゅっと、抱きしめて貰おう。


息が、出来なくなるほどに。


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